イーハトーブ紀行 後編
前編からの続き。
この日は時間がとれたので盛岡市内を散策しました。
まずは駅の西、雫石川を渡ってさらにに行ったところにある「岩手県立美術館」に行きました。この時期は常設展だけでしかも平日だったのであまり人はいなく、ゆっくり鑑賞することができました。建物自身がとても美しくデザインされていて見所です。萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武、加守田章二など岩手にゆかりのある作家の作品が展示されていました。
昼食は盛岡駅の中にある「回転鮨 清次郎」で食べました。盛岡では人気があるお店のようです。確かにちょっと高めですが美味しかったです。
盛岡駅の駅ビルは「フェザン」と呼ぶのですが、アルファベットで書くと「FES"AN」とSに濁点のようなものが付いています。わりと読みやすかったりします。
盛岡を舞台にしたNHKの朝の連続テレビ小説「どんと晴れ」で何度も登場した開運橋で北上川を渡りました。川や橋がある風景は好きです。街の中心部である大通りアーケード街を通りました。地方都市の疲弊の話をよく聞きますが、県庁所在地は別であるという話は本当なようです。とても活気がありました。
アーケード街のちょっと北に進み、盛岡地方裁判所にある名物の石割桜を見ました。本当に石の割れ目から大きな桜が生えていました。感動的です。
すぐ近くには「岩手県公会堂」の古い建物もありました。歴史のあるたてもので現在も使われているようでした。フランス料理のレストランも併設していました。
さらに東へ進み、盛岡市内を流れるもう一つの川の「中津川」を与の字橋で渡りました。渡った先に「紺屋町番屋」という古い消防番屋が残されていました。この辺りは「紺屋町」と呼ばれ、古い建物が多く残っているようです。
すぐ近くの「白石せんべい店」でお土産の南部せんべいを買いました。20種類以上の味があって1つから買うことができます。
さらにその付近には「釜定工房」という南部鉄器のお店がありました。モダンなデザインの製品もいろいろありました。真っ黒な色と重量が印象的です。
その向かいあたりの「ござ九」というお店も歴史がある籠などを扱う雑貨屋で、いい佇まいをしていました。
さらに南へ進み、「肴町」と呼ばれる商店街にやってきました。ここも割と人が多く賑わっていました。「中三(なかさん)」という青森県に本店があるデパートもありました。
その近くの「もりおか啄木・賢治青春館」に立ち寄りました。第45回企画展 旧第九十銀行創建100周年記念事業「賢治 そのときの盛岡展~モリーオゆかりの地を訪ねて」が開かれていいました。宮沢賢治は青春の多感な時期に10年ほど盛岡に住んでいたそうです。またその時期は洋風建築が建ち始めるなど近代化に向けて大きく変貌を遂げている時期で、彼の作品のハイカラさはそんなところから来ているのかもしれないとのことでした。
中の橋で中津川を再び渡って、お城の近くの「桜山神社」に立ち寄りました。裏手に烏帽子岩と呼ばれる大きな岩がありました。
すぐ隣りから盛岡城址公園に入って行けます。建物は残ってないですが立派な石垣が残されていました。
頂上には石川啄木の句碑がありました。
不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心ベンチに寝っころがっているおじさんがいました。十五歳の頃を思い出しているのかもしれません。
僕も持参していた宮沢賢治の文庫本を読んでみました。その日は真っ青な空で湿度も低くとても爽やかな気候でした。
山を降りて「盛岡城址公園」バス停から「でんでんむし」という市内循環バスに乗りました。バスの車体が子供の絵で塗られていて、しかもかなりの画伯っぷりでいい味です。
もう一度中の橋を渡り、ぐるっと回って擬宝珠で有名な上の橋で中津川もう一度渡って、「材木町南口」のバス停で下車しました。材木町イーハトーブ アベニューという通りには宮沢賢治に関連したオブジェなどが据えられていました。
『注文の多い料理店』の出版社だという光原社に併設した可否館という喫茶店で休憩しました。ちょっと恥ずかしいですが宮沢賢治の続きを読んだりしてみました。あまり混んでなかったのでゆっくりくつろぐことができました。
そこからしばらく歩いたところにある「啄木新婚の家」にも立ち寄ってみました。わりと大きな家でしたが父母妹と同居で窮屈だっだそうです。
再び盛岡の繁華街の中心に戻ってきて映画館通りの辺りを散策しました。確かに映画館がたくさんありました。
南側の菜園という地区にある「川徳」という盛岡を代表するデパートに行ってみました。わりと活気があるようでした。そういえば町にもカワトクの袋を持った人が多くいました。
夕食は人気の白龍(パイロン)は敢えて避けて「香醤(コウジャン)」という小さめなお店に行ってみました。上にのっている肉味噌が美味しいです。テーブルにおいてあるので自由に追加できます。値段が安いのも魅力です。食後に自分で生卵を割り入れて溶いて渡すとスープを注いでくれてます。「鶏蛋湯(チータンタン)」といういわゆるたまごスープでこれにも肉味噌を入れます。こちらも美味しかったです。
東京へ帰るのに新幹線は面白くないので、最近話題になっているピンクの夜行高速バス「WILLER(ウィラー)」を利用してみました。盛岡発が0時20分と遅いのでどうしようかと思ったのですが、「開運の湯」という温泉施設があったので行ってみることにしました。
再び盛岡駅の西側です。歩いて杜の大橋を渡りました。渡りきったら左に曲がり南下します。歩道や街頭などは無く車がびゅんびゅん通るので危険です。このルートはおすすめできません。でも駅から20分で着きました。
ここにはプル釜とよばれる特殊なサウナのような施設があり、しかもキャンペーン中で8時以降だったので1000円で利用できました。プル釜とは特殊な石を釜で800度まで熱しその石を取り出して石からの輻射熱で体を温めるものでした。従って熱は空気を媒体として伝わるわけではないので室温自体はサウナよりはずっと低いということらしいです。寝っ転がっている確かに体の芯から温まる気がしました。岩塩を使った岩盤浴の様なものもありましたがそちらよりも温まる気がしました。
その後温泉にも入りました。露天風呂に寝湯といって水深が浅くて寝転べる場所がありました。空を眺めると星がとても綺麗でした。先程読んだ銀河鉄道の夜を思い出さずにはいられません。
入浴後は休憩所で寝転んでセロ弾きのゴーシュを読んだりしました。
帰りは南側の盛南大橋で雫石川を渡りました。こちらの道のほうが安全でしかも近かったです。盛岡で夜行高速バスの発車までの時間の過ごし方としてはかなりおすすめです。
WILLERのバスは盛岡駅西口から発車しました。このバスには既に乗客が乗っていました。青森発、弘前経由で来ているようです。見たところ満員でした。座席のリクライニングの角度は大きく枕の位置を上下に調整できます。ドーム状の覆いで顔を隠せるようになっていて落ち着きます。なかなか良いです。
東北自動車道に乗り、紫波SAで休憩。まだ乗ってすぐだったので降りませんでした。その後、国見SA、佐野SAでそれぞれ10分程度休憩しました。
中央環状線の中野長者橋出入口で首都高を降り新宿スバルビル前到着は予定の10分遅れの7時40分ごろでした。格安ですが、僕には質の良い睡眠は難しく、残念ながら翌日仕事が入っている場合は無理だと思いました。